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現役アニメーターであり,アニメ教育にも命をかけているおばた先生が,日々の出来事や思いを綴ります。2012年1月以前のブログはこちら→http://ameblo.jp/obatasensei/
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2014年03月14日 (金) | 編集 |
新海誠作品の感想、第2段。
昨年公開された「言の葉の物語」について語らせていただきます。

今までにきちんと観たのが6回、仕事中にコンパクトデッキで流し見した回数は数知れず。
靴職人を目指すちょっと大人びた高校1年生のタカオと、ストレスが原因で職場に行けなくなった27才のユキノの孤悲(恋)物語です。

雨の降る新宿御苑が主な舞台となるのですが、そこは、日常(駅の雑踏や学校、自宅)とは明確に隔てられた場所であり、二人が出逢い、一歩を踏み出す為に用意された異空間なのです。
雨というモチーフは迷いや躊躇、執着や過去そのものを流しさる為のアイテムのように感じられます。

夢に邁進する高校1年生と夢破(ら)れ社会復帰がなかなか出来ない27才の女性が雨の日に出逢い、雨の日だけの逢瀬を重ねていく。
学校、そして職場、行くべき所に行くことに抵抗を感じている二人だからこそ、直感的に分かりあえる存在となり、踏み出そうとしている一歩をサポートしあえたのかもしれない。

ことのは

ひょんなことからユキノが職場に行けなくなった事情をタカオは知る。
それとともに自分とユキノの意外な関係性をも知る。
タカオはユキノをおとしいれた奴等に抗議をしに行き、逆にボコボコにされてしまうが、そのことをユキノには言わない。
偉いねぇ。

世の中には人を傷つけたり、陥れたりしても良心の呵責を全く感じない輩が存在するのだ。
人間性と頭のよさは比例しない。
人間性の低い馬鹿ならチンピラになる程度で済むが、人間性は低いのに頭のいい奴が権力の中枢に入るとかなりやっかいなことになる。

さて、そんな波乱のあと、豪雨に追いたてられ二人はユキノのマンションへ。
そこで穏やかな時間を共有した二人が「今まで生きてきて、今が一番幸せかもしれない」と同時に感じあった時、どうかこのままハッピーエンドで終わってほしいとさえ思ったけれど、二人には本当の一歩を踏み出す為に、最後の辛い儀式が待っていました。

圧巻のラストシーンで二人は感情をぶつけ合うことで全てを開放します。
特にユキノは、まるで14才の少女のように大声で泣き声をあげ、押さえていた全てを吐き出します。
吐き出して心が空洞になったからこそ、そこにお互いの気持ちが入り合えたのでしょう。

降り続く雨の雲間から差し始める陽の光、ラストシーンの舞台となった階段の踊り場からカメラは大きく引いて、マンションごと回り込んでいく、テーマ曲のレインが小気味良く始まり感動を包み込んでいく。
その時初めてそれまでのBGMがイントロだったことに気付く。

エンドロールの後には二人のその後を描いたシーンがあり、余韻を、より深いものにしてくれる。
なんと美しく、なんと切なくもじれったいような幸福感を抱かせてくれる作品であろうか。

学生たちに「秒速」と「言の葉」では、どっちが好きかと聞いたら、全員が「言の葉」と答えた。
「言の葉」は間違いなくいい作品だ。
でも、私は「秒速」だけどね。
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